エラの骨を削るということ PART1~序章
エラの骨を削るということ
今回はエラ削りについてのお話しになります。
エラの骨を削る手術の適応は、見た目のフェイスラインの形態に骨が大きく影響しているかどうかで決まります。
いわゆるエラ張り顔の特徴として、正面から見たときにフェイスラインが角張っていることが挙げられます。
いわゆるホームベース型と言われるタイプです。
一般的にはこの角ばりが顕著なほど手術での変化が大きく、良い適応になります。
横顔は、いろいろなタイプがあって一概にこの形とは言い難いのですが、(タイプについては後ほどお話しします。)一般的には、横顔で顎から耳にかけての骨の形態がはっきりしている方ほど手術後の変化が大きく表れます。
逆に、顔と首の境界が不明瞭で骨の形がはっきり出ていない方は、手術での横顔の変化はあまりありません。(エラ張り顔にはこのタイプはあまりいらっしゃいませんが)
一般的にエラと言っているのは、骨では下顎角という部分になります。
横顔ではこの部分です。
標準的なエラ削りというのは、この下顎角を中心にこの角にある骨を削って小さくする手術です。
当然、削った分だけ顔が小さくなっていく筈で、少なくとも横顔では角が小さくなって目立たなくなります。
ただし、手術でこの下顎角だけを削っても、正面から見たフェイスラインが小さくなるとは限りません。
おまけに、横顔でも、下顎角だけを削って自然なフェイスラインになる方はそれほど多くはありません。
下顎角の形態について
下顎角だけを削っても、正面から見たフェイスラインが小さくなるとは限らない理由については、後述します。
その前に下顎角の形態について少し詳しくお話ししていきたいと思います。
正面と横顔で見た下顎角の位置を、サカモト君(頭蓋骨模型の事です)で示すとこの部分になります。
下顎骨の中での下顎角の位置をもう少し詳しく解剖学的に説明すると、
「下顎骨は、水平な馬蹄形の部(下顎体)と、その後端から上方に向かう部(下顎枝)に分けられ、下顎体の上縁は歯槽部で、下縁は下顎底といいます。そして、下顎底が下顎枝にうつる角の部分を下顎角と呼びます。」
という事になります。
ちなみにこのサカモト君の骨格はとても典型的なエラ張り顔で、手術による変化が出やすいタイプです。
ではどういったタイプを典型的なエラ張り顔と言うのでしょうか?
これはまず、横顔でオトガイからつながる下顎底のラインに対し、下顎角部分が少し突出していることが挙げられます。
また、正面から見るとこの下顎角が下顎骨の全体的なアウトラインからはみ出るように外に張り出しています。
つまり、下顎角が外に向かってエビ反りになった形態をしています。
このエビ反りをCT画像で見るとこんな感じです。
このタイプは、下顎角を削るだけで正面でも横顔でもひとまわりフェイスラインが小さくなります。その意味で非常に効率の良いタイプと言えます。
ただし、エラが張っている方すべてがこのタイプではなく、全く反っていないどころか中には下顎角先端が内側に入り込んでいるタイプまで存在します。こういったタイプは下顎角の削りだけではあまり変化が得られず、下顎角に限定しない広範囲な下顎骨形成が必要になります。
どういったタイプにどんな術式を選択すべきなのか?
この事を分かりやすく理解していただくために、次回はエラの形状を分類してそれぞれのタイプに合った治療法を考えていきたいと思います。