鼻中隔延長術 上級者編~第1章 : 鼻中隔延長術のおさらい
2008年4月から2010年3月までの2年の間に153人に鼻中隔延長術を行いました。その153人の手術後の経過を調査して、どのような問題が起こったのかを調査し、また、その原因は何であったのかを検討しました。
鼻中隔延長術というのは、短い鼻や低い鼻先を修正するために鼻先を前方や下方に伸ばす手術です。もっと正確に言うと、この手術で伸ばされるところは鼻先だけではありません。左右の鼻の間の鼻柱と呼ばれる部分も下に向かって伸ばすことができます。
鼻中隔延長術 上級者編~第1章 : 鼻中隔延長術のおさらい 目次
鼻中隔を延長できる長さ
この患者さんでは、正面で見たときに小鼻(鼻翼)より鼻の真ん中がわずかに下に伸びるように、鼻柱の付け根を下に向かってに1ミリ伸ばしました。そして、上を向いた鼻先を修正するために鼻先は斜め前下に向かって4ミリ伸ばしました。
そうすることによって横から見たときの唇の付け根から鼻先に向かう角度が上向きから水平方向に変わりました。
つまり、鼻中隔延長術で希望の鼻になるためには、鼻先から鼻柱までのどの部分を延長するのか、どれだけの長さに延長するのか、どちらの方向に延長するのかを決定することが大切です。
延長できる長さは鼻先と指でつまんで引っ張ってみるとわかります。
鼻の皮膚と粘膜が伸びるところまでは鼻先を延長することができます。
あとは、延長に使う軟骨の大きさによって皮膚や粘膜の限界まで伸ばすことができるのか、それより少ししか延長できないのかが決まります。
鼻中隔延長術に使用する軟骨
鼻中隔延長術に使用する軟骨は、鼻の穴の奥にある鼻中隔軟骨と耳の軟骨と胸の肋軟骨の3種類があります。
2年間の統計では76%の患者さんに鼻の軟骨を使用しました。16%には肋軟骨を使いました。耳の軟骨は8%の患者さん(10人)に使いました。
この耳の軟骨を使うことになった患者さんは、胸に傷痕ができるのは嫌なので鼻か耳の軟骨でやってほしいと希望されていました。
そのうち、10人中3人は耳鼻科で鼻づまりの手術を受けたときに鼻中隔軟骨が切り取られていましたので、耳の軟骨を使うことになりました。
残りの7人では鼻の奥から取り出した軟骨が小さすぎて使い物にならなかったため、手術中に耳の軟骨を使うことに変更しました。
~ 過去2年間の鼻中隔延長術の統計 ~
<使用した軟骨>
- 76% 鼻中隔軟骨
- 約半数には保存軟骨を併用
- 16% 肋軟骨
- 8% 耳介軟骨(10人)
- 5% 採取した鼻中隔軟骨が小さすぎた
- 3% 鼻中隔軟骨がすでに切除されていた
保存軟骨
鼻中隔軟骨を使う患者さんでも、取り出した軟骨が小さめで固定が悪く、ぐらついてしまう時には、保存軟骨というモノを使っています。
保存軟骨は他人の胸の軟骨を薬品で処理したドイツ製の商品です。軟骨の中の細胞成分はすべて取り除いてありますので、拒絶されたりウイルスのような病気が移ったりする心配はありません。
保存軟骨はいずれ吸収されるのではないかという心配がありますが、4年たっても吸収されていないという報告もあり、何年で吸収されてしまうのか、それとも永久に残るのか、はっきりしたことはわかっておりません。
そこで、保存軟骨を用いるときには、それが吸収されても鼻が短くならないように、患者さん自身の鼻の軟骨と併せて、補助的に使うようにしています。
そうすれば数年たって、保存軟骨が吸収されてなくなっても、それまでに鼻先が固まって形が崩れる心配はないと考えております。
今では、鼻の軟骨で延長する患者さんのうち、約半数の人に保存軟骨を使っています。
第2章は「鼻中隔延長の術後に起こる問題点」です。
鼻先の軟骨の変形、鼻尖や鼻柱の傾き、鼻づまりといった問題・・・の解説です。