予定外重瞼線
切開法を使った重瞼術では、皮膚の切開した線とできあがった二重の折れ曲がる線が一致します。いや、一致しなければなりません。
一致しないとどうなるかといいますと、計画したとおりに二重ができません。予定外の二重ができてしまいます。
これを私は予定外重瞼線と呼んでいます。
予定外重瞼線 目次
切開線と一致しない二重を「予定外重瞼線」と呼びます
上まぶたの皮膚を切開して二重の線を作る手術が切開法です。
切開する傷の長さが目頭から目尻までまぶたの全体に及ぶ長いものを全切開法、切開線が5ミリや1センチと短いものを小切開法と呼びます。
どちらの方法でも切開したことによって皮膚の表面の傷からまぶたの奥に向かって瘢痕組織ができます。
そして、この瘢痕組織がまぶたの裏と皮膚を連結して二重を作る役割をはたします。
つまりどういうことかといいますと、目を開く時には、まぶたを持ち上げる挙筋という筋肉がこの連結(瘢痕組織)を上の方に引っ張ります。
そして、引っ張られた連結が皮膚の傷跡の線を引きあげます。結果として、傷跡部分で皮膚が折りたたまれて二重ができます。
1年前に全切開法を受けました。右目に予定外重瞼線ができています。
目を閉じると、切開の傷痕より上に折れ癖の線が確認できます。
眼瞼下垂の修正術の術後に予定外重瞼線ができています。
まぶたを閉じると、切開の傷痕の上に折れ癖の線が確認できます。
この予定外重瞼線は切開線より上にできます。そのため、できあがった二重の幅が予定より広くなってしまいます。
予定外重瞼線の経過
切開法の術後1週間、右目に予定外重瞼線ができています。
予定外重瞼線は皮膚の折れ癖です。手術から1週間後に抜糸のために来院していただいた時にできていることに気づきます。
術後2週間、予定外重瞼線が残っています。
抜糸をした後、2~3週間ほど経過して皮膚のむくみが消えると余分な折れ癖である予定外重瞼線が消えて、当初の計画通り切開線に一致した二重になることがあります。
術後3週間、予定外重瞼線は消えました。
しかし、予定外重瞼線が1ヶ月以上消えないで残っていると、その後消えることはあまり期待できません。そのままでは、永久に予定より幅の広い二重が残ってしまいます。
切開法の術後、左目に予定外重瞼線ができています。
術後3ヵ月しても予定外重瞼線が残っています。
予定外重瞼線ができるタイミング
予定外重瞼線は一体全体いつ発生するのでしょう。手術が終了した時にすでにできていることがあります。
予定外重瞼線が自然に消えた患者様の手術直後の写真を見てみますと、すでに予定外重瞼線が発生していました。
切開法の術直後、すでに予定外重瞼線ができています。
しかし、手術が終わってクリニックを出ていかれる時には予定外重瞼線ができていなかったのに、1週間後の来院時に予定外重瞼線ができていることはよくあります。
実際には、手術後の腫れが強くなって目が開きにくくなると予定外重瞼線はできやすくなりますので、手術当日の夜か翌朝がもっとも発生しやすい時です。
小切開法の手術直後にはできていなかったのに、術後2時間後に予定外重瞼線が発生しました。
予定外重瞼線ができるタイミング
なぜ予定外重瞼線ができるのか、その原因は明らかになっていません。しかし、目の開きが悪い、つまり、目力の弱いまぶたにできやすいことは経験的にわかっています。
腫れが強くなるとできるのも、腫れが強くなると目の開きが悪くなるから予定外重瞼線ができるのです。
目の開きが悪い目力のないまぶたでは、目を開ける時に眉毛も一緒に持ち上げて目を開こうとします。
目力の強いまぶたでは、眉毛を持ち上げないでもまぶたを開くことができますので、切開線より上側の皮膚が切開線の上に覆い被さってまぶたが折りたたまれます。
つまり、切開線に一致して二重ができます。
しかし、目力がないと眉毛が持ち上げられることによって切開線より上の皮膚も上方に引っ張られます。そうすると、切開線に被さるように皮膚がたたまれることになりません。
目を開いたところで、おでこに入れた力を緩めると持ち上げられていた眉毛が下がります。すると、まぶたの皮膚が余ってしまいます。この余った皮膚はどこかで折りたたまれないと収拾がつきません。本来なら、切開線で折りたたまれるべきなのです。
しかし、たまたま切開線より上のところで皮膚が折りたたまれてしまうと、そこが折れ癖となり、予定外重瞼線になってしまいます。
予定外重瞼線は目力のない目に起こりやすいと言えます。
目力が弱い左目に予定外重瞼線ができています。
予定外重瞼線の治療
予定外重瞼線というのは非常に困りものです。それでは予定外重瞼線が見つかった時にはどうすればよいでしょう。
手術直後
手術を終了した時に予定外重瞼線が見つかった時には、切開線でしっかりと折れ癖ができるように袋とじという処置をします。
これはどういうことかと言いますと、切開線の上の皮膚と下の皮膚を糸で縫い合わせて折りたたみます。
もちろん、縫い合わせると言っても永久にくっつけてしまうわけではありません。一時的に切開線が折れ癖になるように固定すると言うことです。
袋とじを術後3日間続けます。
手術を終了した時に予定外重瞼線が見つかった時には、切開線でしっかりと折れ癖ができるように袋とじという処置をします。
切開線の上の皮膚と下の皮膚を糸で縫い合わせて折りたたみます。
一時的に切開線が折れ癖になるように固定します。
手術から1週間以上経過した後
1週間以上経過した予定外重瞼線に袋とじを行っても、それだけでは治りません。
1週間以上経過した予定外重瞼線は、予定外重瞼線とまぶたを持ち上げる筋肉の癒着がしっかりできてしまっているからです。
1週間以上経過した予定外重瞼線は、予定外重瞼線とまぶたを持ち上げる筋肉の間にできた癒着を剥がさなければなりません。
しかし、剥がすだけでは、また予定外重瞼線が再発する危険があります。そこで、癒着を剥がした後で袋とじを行います。
この時は袋とじを1週間続けたほうが安全です。