エラの骨を削るということ PART2~下顎骨形態のタイプ
下顎骨形態のタイプ
下顎骨形態のタイプ分けは以前から試みられています。
日本人のエラに合った分類の一つに、出口正巳先生らの行ったタイプⅠ~Ⅲの分類があります。
これは
- 下顎角部に骨棘があり咬筋肥大を伴うもの
- 下顎体部が全体に外側に張り出し、角部はむしろ後内側へ回り込んでいるもの
- タイプⅡに加えてオトガイ部の垂直高が短いもの
という3つのタイプに分類されます。
このうちタイプⅠはまさにサカモト君タイプ、つまり前回お話しした典型的なエラ張り顔です。
ここで言う骨棘は、前回説明した下顎角が外に向かってエビ反りになった形態を言っています。
タイプⅡは下顎角だけでなく、下顎全体が厚く外側に張っている状態です。
下顎角はむしろ後内方に回り込んでいるとありますが、こうなっていると正面から見た下顎の角は実際の下顎角より手前になります。
ですから、下顎角部だけ削っても正面から見た顔はあまり変わりません。
実際には、このタイプⅠとⅡの中間レベルの形態もあります。というより、中間レベルが一番多い気がします。
そのため、今回はこのタイプⅡを二つに分けて考えます。
具体的には、体部自体が厚いタイプの内、正面から見て下顎体部から下顎角に向かって少しずつでも外にふくらんでいくタイプをⅡ-Aとし、従来の定義通りのタイプⅡ、つまり下顎角よりもむしろその手前のふくらみが大きく正面から下顎角の頂点か見えないタイプをⅡ-Bとしました。(勝手に定義を変えて申し訳ありません。)
もう少し簡単に表現すると、正面の写真でエラの角に見える部分と横顔での下顎角の角が一致するタイプがⅡ-A、正面から見ると本当の下顎角が内側に隠れてしまい一致しないものをⅡ-Bということになります。
タイプⅢはオトガイの縦方向の長さが短く下顎底が水平に近くなるため、横顔でエラが直角に見えやすいタイプです。
このタイプはshort&square faceとも呼ばれ、エラ削りでは少し厄介です。この事については具体的な術式の所で詳しくお話しします。
このタイプⅢもタイプⅡ同様、正面から下顎角が完全に見えないものからわずかでも見えるものまでバリエーションがあります。
タイプ別に術後のフェイスラインがどうかわるか?
タイプⅡやタイプⅢでは、下顎角近傍のエラ削りのみでは正面から見たフェイスラインの変化に乏しい事はさきほどお話ししましたが、この事をもう少し分かりやすくするために、それぞれのタイプで下顎角部を削った場合、正面から見た骨格にどういった変化が現れるか確認してみましょう。(タイプⅢはタイプⅡとほぼ一緒なので省略しています。)
如何ですか。
いわゆる下顎角を削るだけの手術は、タイプⅠ以外では大きな変化が望めない事が分かりますね。
一般にエラ削りと言うと、下額の後方に触れる角の骨を削る手術と思われがちで、実際にそういった手術が多いのが現状ですが、タイプⅠ以外で正面から見た顔を小顔にするためには、下顎体を含めた広範囲な面を削る手術が必要になります。
次回は、実際の手術法についてお話したいと思います。