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鼻中隔延長術 上級者編~第3章 : 術者の美的センスと観察眼

[鼻背のラインに沿って延長した結果、鼻が大きくなる]

鼻背のラインに沿って延長した結果、鼻が大きくなる

この患者さんの場合、鼻筋のラインに沿って鼻先を前方下方に伸ばしました。そうなると、鼻先が高くなり過ぎて鼻全体が大きくなってしまいます。

このような延長のやり過ぎや延長方向の間違いの原因としては術者の美的センスの欠如、あるいは、術者の術中評価・判断の誤りが上げられます。術者に美的センスがなければ、どういう形の鼻を作ろうかというデザインの段階ですでにきれいな鼻とはいえないものが計画されてしまいます。

また、術者に術中の鼻の形を正しく観察する能力がないと、鼻先を伸ばし過ぎてていることや間違った方向に鼻を伸ばしているに気づきません。結果として、変な鼻ができあがってしまいます。

鼻中隔延長術 上級者編~第3章 : 術者の美的センスと観察眼 目次

術後の形を見抜く観察眼

術後の形を見抜く観察眼

この患者さんは“あゆ”のようなすらっとした鼻にしてほしいと希望されました。そのためには鼻先を下へ伸ばします。

ここで重要なことは、鼻先をどちらの方向に伸ばすかということです。

鼻筋のラインに沿って鼻先を前方斜め下に伸ばしますと、先ほどの症例のように鼻先が高くなって、全体として大きな鼻になってしまいます。

[鼻尖が前方に向かって高くならないように下方へ延長]

術後の形を見抜く観察眼

“あゆ”のようなすらったとしていても控えめの大きさの鼻を作るためには、鼻先を下に向けて倒していく必要があります。

言い換えますと、鼻尖がこれ以上前に向かって高くならないように注意しながら、下方へ延長しなければなりません。

希望にあった鼻を作るためには、術者に美的センスと実際の形を見抜く観察眼がなければなりません。

延長のやり過ぎ・延長方向の誤り

[他院で鼻中隔延長術を受け、鼻尖を下方ではなく前方に延長された]

他院で鼻中隔延長術を受け、鼻尖を下方ではなく前方に延長された

延長方向の誤りとしてよく見かけるのが、鼻尖を下方ではなく前方に延長してしまうことです。

この患者さんは鼻の真ん中が小鼻に比べて下に降りてきていないために、小鼻があぐらをかいたように見えます。

その修正を希望して、他院で鼻中隔延長術を受けたにもかかわらず、手術をした医師は鼻先を前に向かって高くしてしまいました。そのため、患者さんは鼻が大きく感じられるようになったと言います。

[鼻中隔軟骨を使って再延長]

鼻中隔軟骨を使って再延長

この手術では耳の軟骨が使われていました。

使用された耳の軟骨を取り出してみますと、鼻柱を下に伸ばすには大きさが足りませんでしたので、鼻中隔軟骨を取ってきて鼻柱を下に向かって押し出すように延長術を行いました。

鼻先の高さは低くしました。患者さんはこのような低めのやや垂れ鼻に見える鼻を希望されていました。

このケースのように鼻柱を下へ伸ばさなければならないのに、鼻先を前方に高くしてしまう間違いが一番多く見受けられます。

その原因は、術者のもともとのデザインが間違っていたということがあります。

しかし、正しくデザインしていても、術中に間違って軟骨を縫いつけてしまうことが起こります。

もう少し詳しく説明しますと、鼻中隔の先端に軟骨を縫いつける時に、鼻柱の皮膚を下に向かってしっかり引っ張っていないと、鼻柱の皮膚が上に戻ろうとして、移植する軟骨を押し上げてしまいます。そうなると、固定する前に軟骨がおさまりのいい前方に向かって回転してしまいます。

それに気づかずに、軟骨を鼻中隔に縫いつけて固定すると鼻は下へ伸びずに前に向かって高くなってしまいます。

延長のやり過ぎ・延長方向の誤り

これを避けるためには延長の軟骨がしっかりと縫いつけられるまでの間、手術の助手が鼻柱の皮膚を下に向かってしっかりとひっぱっていなければなりません。

また、助手が手をゆるめないように、術者は見張っていなければなりません。

[棒状の軟骨をしようすると鼻先だけが下へ伸びて、鼻柱の角度が下方に倒れてしまう]

棒状の軟骨をしようすると鼻先だけが下へ伸びて、鼻柱の角度が下方に倒れてしまう

もう一つ起こりやすい延長方向の間違いは、鼻柱の角度を下に倒し過ぎてしまうことです。

これも、最初から術者のデザインが悪いために起こることがあります。しかし、そうではなくて、幅の細い棒状の軟骨を使って延長を行うと、鼻先だけが下に押し出されます。

鼻柱基部を延長するための軟骨がありませんので、鼻柱部が下に降りてきません。そのため、鼻先が垂れた形の鼻になってしまいます。

[幅の広い板状の軟骨を使って、鼻先と鼻柱の両方を下へ伸ばす]

幅の広い板状の軟骨を使って、鼻先と鼻柱の両方を下へ伸ばす

これを避けるためには、鼻尖から鼻柱基部まで鼻柱の全長に渡って軟骨を差し込んで延長する必要があります。

そのためには、棒状の軟骨ではなくて、幅の広い板状の軟骨を使わなければなりません。


第4章は「いい かげん(加減)の延長」です。

患者さんの、ちょうど「いい かげん」を目指して、の解説です。