額の輪郭形成
額は顔を特徴づける重要なパーツです
額の形はあまり美容外科で注目されていないようですが、額の形は顔の美しさや性別や民族の特徴を決める重要なパーツです。男性と女性を区別する特徴の一つです。一般的に女性のおでこは丸いのに対し、男性のおでこは平らで角ばっています。
西洋人と東洋人の違いもおでこによって区別できます。
西洋人のおでこは目がくぼんで見えるほど前に出っ張っています。東洋人のおでこは出っ張っていません。
額の輪郭形成 目次
額の形に対する希望
額の形 希望ランキング
- 西洋人顔
- 丸い額
- 立った額
- 西洋人ほどではなく彫りを深くしたい
- 鼻筋を高くしたい
- 眉骨の突出を強調したい
希望内容のうち一番多かったのは西洋人のような彫の深い顔になりたいというものでした。次に多かったのは、額を丸くしたい、特にアムロちゃんのようなつるっとした丸いおでこにして欲しいというものでした。そのほかには、後ろに傾いたおでこをもっと垂直に立ったおでこにしてほしいという希望や、西洋人ほどではないけど目の彫をもう少し深くしたいという希望がありました。おでこの形を丸くしたいという希望する人もいれば、反対にスーパーモデルのように眉骨が出っ張った、やや角ばった印象のおでこを希望する人もいます。もう一つ興味深いのは鼻筋をもっと高くしたいからおでこも膨らますというケースです。
鼻筋の高さとおでこの膨らみのバランス
なぜ、鼻筋を高くしたいと希望したら、おでこを膨らまさなければならないのか?
この患者さんは以前に隆鼻術を受けています。しかし、目と目の間が離れは印象があり、鼻筋が物足りなく感じたため、もっと鼻筋を通してほしいと希望されて来院されました。正面から見るともっと鼻筋が通っていてもよさそうです。しかし、横から見てみると、額と鼻の付け根(鼻根部)の高さがほぼ同じです。
これ以上鼻筋を高くすると、おでこより鼻の付け根が高くなってアバターのようになってしまいます。
額を膨らませて鼻筋より額を高くすれば、不自然ではありません。
手術では、骨セメントを使って額を5ミリ膨らまし、眉間と鼻筋を3ミリ高くしました。鼻先は鼻中隔延長術で前方に伸ばしました。額を高くすることによって、鼻筋を高くしてもアバターのような不自然な顔になるのを避けることができます。また、鼻筋が高くなっただけでなく、目の彫も深くなって顔に立体感ができました。
額の輪郭形成の難しい点
額の輪郭形成は術後にどのような顔になるのかなかなか理解できません。言葉では3次元的な変化をうまく説明できません。写真画像を使ってコンピューターシミュレーションを行っても、目の彫りをどれぐらい深くしたらよいのか、膨らましたおでこが自分に似合うのかといったことを判断することは不可能です。
そこで、ヴェリテクリニックでは額の輪郭形成術を考えている患者さんには全員、ヒアルロン酸を注入するシミュレーションを受けていただきます。
ヒアルロン酸によるシミュレーション
3日から1週間ほどで吸収されるヒアルロン酸を使用して、額を膨らませます。
その際、ヒアルロン酸は少しずつ注入し、段階的に額の形や膨らみを見ていただきます。
- 丸いおでこか平らなおでこか
- 眉骨が出っ張ったほうがよいのか
- 眉骨が出ていない丸いおでこがよいのか
- 目の彫りを深くするのか
- 今のままでよいのか
- 目の彫りを深くするなら、どの程度深くするのか
といったことを実際におでこをふくらませてみて、自分に似合っているのかどうかを判断していただきます。
シミュレーションの結果、額のどの部分を何ミリほど膨らませるのかというデータを得ることができます。
そのデータを設計図として額に挿入するプロテーゼをシリコンや骨セメントを使って作成します。もちろん、長持ちするヒアルロン酸を注射したり、脂肪を注入したりすることもできます。
2009年からの3年間に97例がヒアルロン酸注入で額の輪郭形成術のシミュレーションを受けました。そのうち15例は2回以上ヒアルロン酸注入によるシミュレーションを受けました。97例のうち60例がシリコンプロテーゼや骨セメントによる額の輪郭形成手術を受けました。37例は手術を中止、あるいは、考え中です。シミュレーションによって約4割の方は手術結果が希望と違うようだと実感されて、手術を受けないことにしました。
シミュレーションを受けたことによって、正しい判断ができたと言えます。
額の輪郭形成の手術法
- ヒアルロン酸注入
- 脂肪注入
- シリコンプロテーゼ
- 骨セメント
- アパタイト
ヒアルロン酸注入
ヒアルロン酸は体内に注入されますと、徐々に吸収されます。現在いろいろな会社からタイプの異なるヒアルロン酸が販売されていますが、会社の提供する資料に寄りますと、吸収されるのに2年かかるといわれています。しかし、実際にはヒアルロン酸をたくさん注入しますと2年経過しても大半が残っています。したがって、ヒアルロン酸は直ぐになくなってしまうからといった理由でヒアルロン酸を拒否される必要はないと思います。
額の中央がへこんでいるのを多少丸く膨らますという目的でヒアルロン酸注射を受けるのは大変お勧めです。しかし、ヒアルロン酸で膨らましたおでこは軟らかく、強く押すと凹みができたり、偏ってしまったりするという欠点があります。特に、5ミリ以上膨らませると凸凹を起こしやすくなります。
ヒアルロン酸で目の彫りが深くなるようにおでこ全体を膨らました場合は凹みや偏りによる変形を修正するため、半年か1年に一度メインテナンスのために少量のヒアルロン酸を追加注入する必要があります。
脂肪注入
額を丸くするために脂肪を注入する手術は、日本より、韓国や中国で流行っているようです。脂肪注入は額全体をふっくらさせるのに適しており、額が全体的に丸くなります。脂肪は軟らかいため、眉骨の部分だけ出っ張らせるとか、目の彫りを深くするといった目的には適していません。
脂肪注入のもう一つの問題点は、注入した脂肪の生着率が安定していないことです。注入した脂肪の半分以上は吸収されてしまいます。時にはほとんど全てが吸収されて、おでこが全く膨らまないこともあります。そのため、満足な結果となるまで何回か注入を繰り返さなければならない可能性があります。
脂肪注入の欠点は結果が気に入らないときに、注入した脂肪を取り除くことができないことです。ヒアルロン酸ならヒアルロン酸分解酵素を注射することで、溶かすことができます。シリコンや骨セメントのプロテーゼは抜去すれば元に戻すことができます。
シリコンプロテーゼ
以前はシリコンプロテーゼを入れておでこを膨らませると1年もしないうちにシリコンのエッジが浮き出てしまうからといって敬遠されていました。それは、プロテーゼの形に問題があったためです。以前のプロテーゼは大きな板状のシリコンのブロックをハサミやメスで削って作成していたため、エッジの部分が分厚くなっていました。
額に入れたシリコンプロテーゼの輪郭が完全に浮き出ています
現在販売されているシリコンプロテーゼはエッジの部分が大変薄く、しなやかにできています。そのため、エッジが額の骨から浮き上がってしまうことはかなり少なくなっています。
ヴェリテクリニックで扱っている既製品の額プロテーゼ
現在、ヴェリテクリニックでは厚みや大きさや弯曲が異なる6種類のシリコンプロテーゼを用意しております。おでこを膨らませせる厚みやおでこの広さによって6つの中から一番適したプロテーゼを選択することができます。どのプロテーゼもエッジの部分が浮き上がらないようにぺらぺらに作られています。
それでも患者さん一人一人の骨の輪郭に完全にフィットするとは言えません。厚みや形も患者さん一人一人の希望に応えることはできません。
額のプロテーゼが満たさなければならない条件
- プロテーゼの輪郭が浮き出ることがないように、患者さんのおでこの骨の輪郭とプロテーゼの裏面の形状が完全にマッチしていなければならない。
- 患者さんの希望するおでこの形になるように、プロテーゼの厚みと弯曲を調整しなければならない。
この条件を満たすためには、一人ずつオーダーメイドのシリコンプロテーゼを作成する必要があります。
オーダーメイドのシリコンプロテーゼの作成手順~
まず、頭のCTを撮影します。
CTデータを元に3Dプリンターを使って患者さん本人の顔の骨の実態モデルを作成します。モデルと実際の骨の誤差は1ミリ以下です。
ヒアルロン酸注射によるシミュレーションで確認した厚みにあわせて、実態モデルの輪郭にぴったりフィットするシリコンプロテーゼを作成します。
シリコンプロテーゼは筒状に丸めることができます。そのため、例えば8㎝×13㎝の大きさのプロテーゼでも4から5㎝のキズを通して入れることができます。
通常、額の髪の生え際、又は頭髪内を4~5cmほど切開します。額の皮膚を頭の骨から剥がし、そこにプロテーゼを挿入して中で広げます。
プロテーゼはずれないように金属(チタン)製のスクリューで骨に固定します。
シリコンプロテーゼは額を4~5㎝ほど切開して挿入しますので、眉骨や目の付近を直接見ながら手術することはできません。眉骨や眉間の部分で骨と額の皮膚をキレイに剥離することが難しい。眉骨や眉間の骨の上にプロテーゼがぴったり収まっているのかどうか確認できない。目の直ぐ上で骨の中から出てくる知覚神経を傷つける危険もあります。
以上の理由から、シリコンプロテーゼを使って眉骨の部分を膨らまして目の彫りを深くすることはできません。シリコンプロテーゼによる額の輪郭形成はあくまで目の彫りは深くしないで、額の形を丸くする、或いは後ろに向かって斜めに傾斜したおでこを垂直に立ったおでこに変えるという目的に利用します。
骨セメント
骨セメントは整形外科で人工関節を太ももの骨に固定したり、脳外科で頭の骨の欠損した部分に蓋をしたりするために30年以上前から使用されている医療材料(アクリル樹脂)です。
粉末と液体を混ぜると20分ほどで固まります。骨セメントでできたプロテーゼは硬くて折り曲げることはできません。挿入するためには、後頭部の皮膚を切開して頭の皮を骨から剥がす必要があります。
骨セメントを使って額の輪郭形成を行いますと、眉骨や眉間の部分も問題なく高くでき、眼の彫りを希望通りに深くすることができます。
CTデータから3Dプリンターを使って作成した頭蓋骨の実態モデルの上で、シミュレーションで測定した厚みあわせて骨センメントを作成します。
以前は手術中に骨セメントや眉間や鼻筋のプロテーゼを作成していました。
今では、手術の前日までに額の骨の上にかぶせる骨セメントと眉間から鼻筋を高くするゴアテックスのプロテーゼを作成しておきます。
手術の前に骨セメントを作成することによって、手術時間を短縮することができます。また、手術時間を気にしなくてよいため、骨セメントの作成にじっくり時間をかけることができます。
アパタイトを使った輪郭形成はお勧めしません
ジェル状のハイドロキシアパタイトを2㎝ほどの切開から額の骨の上に注入し、皮膚の上から手で押せて形を整える手術方法はキズが小さくてすむという利点があります。
しかし、注入したアパタイトが均等に広がらず玉を作ったり、凸凹になったりするトラブルを起こす危険があります。そうなりますと、皮膚を大きく切開してアパタイトを削らなければなりません。アパタイトは骨との親和性がよいのは本当です。だからといって、バイ菌がつくことがないとは言えません。実際に、アパタイトによる輪郭形成の術後に感染した症例を経験したことがあります。アパタイトは骨にしっかりと接着して簡単に取ることができないため、取り出すのに苦労します。アパタイトはシリコンや骨セメントに比べると、材料費が非常に高いのも欠点です。
以上の理由から、アパタイトを使った輪郭形成はお勧めしません。
アパタイトを使って額を丸くした 症例 1
アパタイトを使って額を丸くした 症例 2