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理想の豊胸術ってどんなもの? パート2

名古屋院 李 院長 プロフィールはこちら

脂肪注入と人工乳腺

以前に豊胸術の全般的なお話、そしてヒアルロン酸による豊胸術についてお話しさせていただきました。
今回は、脂肪注入についてお話ししたいと思います。
脂肪注入による豊胸術にも、ヒアルロン酸注入同様、メリットとデメリットがあります。
まず、他の術式と比べて優れていることからお話ししていきます。

メリット

1.自家組織であること
ご自分の組織を用いて豊胸したいという方にとっては、脂肪注入という方法になります。
元々バストが大きい方も、その中身は乳腺組織と脂肪で出来ているわけですから、ナチュラルバストにこだわる方にとっては、良い方法といえます。

2.感触が柔らかいこと
ご存知の通り、脂肪は非常に柔らかい組織です。後述する変性脂肪によるしこりさえできなければ、とてもやわらかい感触になります。

3.傷が小さいこと
これは、人工乳腺による豊胸術と比較してということになりますが、脂肪注入の際には、バストの外側や乳輪の境界といった目立たない場所に1.5ミリ程度の小さな穴をあけ、そこから細い針で注入していきます。
術後しばらくの間は、刺入部に虫刺されのような小さな赤い痕は残りますが、時間が経てばほとんど目立たなくなります。

4.一石二鳥であること
脂肪注入を行うためには、その前提として必ず脂肪吸引を行う必要があります。
ですから、バストも大きくしたいけどスリムにもなりたいという方にとっては、その両方が同時に叶えられる一石二鳥の治療になります。

では逆にデメリットはどういったものでしょうか?これも箇条書きにしてお話ししていきます。

デメリット

1.注入した脂肪の一部は吸収されてしまう
前述したヒアルロン酸のようにそのすべてがいずれ吸収されてしまうという訳ではありませんが、脂肪も注入後しばらくの間は徐々に減少していきます。
一般的な注入方法を用いると20~40%程度は吸収されてしまいます。
では、最初からその分余分に注入しておけば良いのではという話になりそうですが、そういう訳にもいきません。
それが次のデメリットです。

2.一度に注入できる量に限界がある。
脂肪は生きた細胞ですから、移植された脂肪がその後、持続的に定着するためには、酸素や栄養分の供給が必要になります。
限られたスペースにあまりにも多くの脂肪をむりやり注入してしまうと、一つ一つの細胞への供給量が少なくなり、場合によってはそのほとんどが壊死してしまうことになります。
これは、魚を飼うときに、小さい水槽に大量に魚を入れれば、酸欠であっという間にみんな死んでしまうのと同じようなものです。
さらに壊死した脂肪は、場合によっては吸収されず変性し、しこりを形成したり石灰化したりします。
体型にもよりますが、一度に注入できる脂肪の極量は200~250cc程度です。
これは、それ以上注入できないということではなく、これ以上注入しても定着する量が変わらないか、場合によっては少なくなってしまうということです。
特に、元のバストが小さい方は、それより少ない量でも脂肪がすし詰め状態になる可能性もあり、この場合さらに注入量を少なくせざるを得ないこともあります。
こういった場合、さらなるサイズアップを望まれる方は、最初の注入から半年程度待って再度注入する必要があります。

3.人工乳腺と比較して、サイズアップに限界がある。
先ほど一度に注入できる脂肪量は200~250ccとお話ししましたが、これが最終的に定着してできるバストのサイズアップは1~2カップです。
人工乳腺であれば、一度に3カップ、4カップ、元の体型によってはそれ以上のサイズアップも可能ですが、脂肪注入では3カップまでが限界です。
ましてや、元の体型や栄養状態、年齢、喫煙など様々な要因で、実際に定着率は違ってくるので、一度の手術でこのくらいは大きくしたいという目標が明確な方には、人工乳腺の方がおすすめです。

4.人工乳腺の豊胸術より手術が大変
単純に胸の手術として見たときには、人工乳腺を入れるより脂肪注入の方が手軽に感じると思いますが、先ほどもお話ししたように、脂肪注入をするためには脂肪吸引を行わなければいけません。
片側に250ccの脂肪を注入しようとすると、単純計算、両側で500ccの脂肪が必要になります。
最近は脂肪を遠心分離して濃縮して注入することが一般的になっていますが、濃縮することで脂肪のボリュームは小さくなってしまう訳ですから、さらにたくさんの脂肪を準備する必要があります。少なくとも800cc、できれば1000cc程度の脂肪吸引を行わなければ、目標の注入量が確保できないと思います。
1000ccの脂肪吸引というのは、けっこうなボリュームです。
特に、痩せている方であれば、お腹全体から吸引しても足りないくらいの量です。
また、術後の痛みについても、脂肪注入したバストより、脂肪吸引した部分の痛みの方が強いケースが多々あります。
当然、吸引が広範囲になればなるほど大変な治療になります。
また、手術時間についても、人工乳腺の挿入より時間がかかります。
どの程度の範囲の脂肪吸引をするかにもよりますが、人工乳腺の豊胸術の少なくとも二倍以上の時間はかかってしまいます。
如何でしょうか?メリット、デメリットとも理解いただけたでしょうか?

では、デメリットを極力少なくしてメリットを生かすためにはどうしたら良いでしょうか?
これには大きく分けて、二つの対策が考えられます。
一つは脂肪の定着率を極力アップさせる工夫、そしてもう一つは手術の負担を極力減らす工夫です。
前者についても最近は様々な工夫を行っています。
この代表的な手技がコンデンスリッチファット脂肪注入です。
これの詳細についてはホームページを見ていただくといいと思うのですが、シンプルにお話しすると、吸引した脂肪を特殊なフィルターのついた容器に入れ遠心分離にかけることで、劣化した脂肪を取り除き、脂肪の定着をする幹細胞を通常より大量に含む濃縮した脂肪に形成する方法です。

こうして作られた脂肪は、通常の脂肪より定着率が高く、また従来の脂肪注入でみられる石灰化や脂肪壊死、しこり形成などがほとんど起こりません。
この手技にはデメリットはほとんどありませんが、しいて挙げれば遠心分離の過程に時間がかかることと、特殊なキットを使用する分費用が余分にかかってしまうことです。

もう一つ、最近取り入れられつつある手法が、脂肪注入前にBRAVA(ブラバ)を仕様する方法です。
BRAVA(ブラバ)とは、ドーム型のカップをバストに吸着させ陰圧をかけることで、バストの皮膚や組織を伸ばしバストアップさせる医療機器です。
従来は、吸引することで少しずつバストアップすることを目的とした機器でしたが、それだけではサイズアップに限界があり、特に日本ではあまり普及しませんでした。

しかし最近になり、このBRAVAを脂肪注入の術前に使用することによって、脂肪の定着率がアップすることが分かり、再び注目されるようになりました。
従来、BRAVAには、陰圧を持続的にかけることで、皮膚の伸展と血管が新たに生まれることによる血流アップが目指せるとされてきました。
脂肪注入の際には皮膚の伸展により注入脂肪量の増大になりますし、血流増加によって注入脂肪に栄養が行きわたりやすくなり、定着率のアップとなります。

 

最近は、美容目的の豊胸術だけでなく、乳房再建の際にもこの方法が用いられるようになってきました。
ただし、この方法には欠点もあります。
一つは、この器具の購入に結構な費用がかかることと、装着している間、苦痛を伴うことです。
施設によって異なりますが、脂肪注入にBRAVAを併用する場合、手術の4週間ほど前から開始します。一日10時間程度装着するのですが、その間持続的にバストを吸引されているので、人によってはかなりの痛みを伴います。
「多少辛くても、バストアップのためなら頑張れる!」という方にはお勧めの方法かもしれません。
ではもう一方の、負担を減らす工夫にはどういったものがあるでしょうか?
デメリットの一つに挙げたように、脂肪注入を行うためには必ず脂肪吸引の必要があります。
そして、その脂肪吸引の負担の方が大きかったりします。
ですから、いかに負担の少ない脂肪吸引を行うかが、この治療全体の負担軽減にとって重要です。

そこで行われているのが、ベイザー脂肪吸引です。
従来の脂肪吸引では、脂肪を吸引する際に、脂肪細胞の間にある神経や血管組織の一部を損傷してしまうことを避けることができませんでした。
これが、術後の痛みや内出血を悪化させる要因になっていました。
ベイザー吸引では、吸引を行う前に特殊な超音波(ベイザー波)を先端から照射する機械を脂肪内に挿入します。
このベイザー超音波の振動により、索状組織・血管・神経組織から 脂肪細胞のみを遊離します。
その後に吸引を行うため、索状組織・血管・神経組織を傷つけずに、脂肪細胞のみを吸引できます。

さらに、不純物の少ない脂肪が採取できるので、定着率のアップにもつながります。

欠点は、機械が高価な分、治療にかかる費用がどうしても割高になってしまうことですが、吸引部分の引き締めにもなるため、できれば選択したいところです。