バスト 1.脂肪注入の豊胸手術を受けました
修正手術 : 他院での豊胸術失敗例
経過 豊胸術失敗例
バストが小さいのがずっとコンプレックスでいつか大きくしたいと思っていましたが、手術は怖いというイメージが強くずっと迷っていました。
雑誌で脂肪注入という方法を知り、これなら自分の体にあるものを入れるだけだから怖くないかもと思い、某美容外科を受診しました。
そこで「痩せているからかなり広範囲から脂肪を取ることになるけど、注入した脂肪はうまくいけば 80 パーセントくらい残るから大丈夫」と言われ、脂肪注入による豊胸術を受けました。
脂肪を注入した胸もかなり痛かったけど、それより脂肪吸引した太ももがとても痛くてしばらく歩くのも大変でした。
肝心のバストは最初のうちは腫れも手伝ってか 1 カップくらい大きくなって見えましたが、日がたつにつれ徐々に小さくなり半年後にはほぼ元のサイズになってしまいました。
ただ完全に元に戻ったわけではなく、両胸にピンポン玉ぐらいの硬いしこりが出来てしまいました。
最初は「乳がん!?」と思い、ビックリして乳腺外科の病院に行きましたが、診断の結果は注入した脂肪が変性したものということでした。
あんなに痛い思いをしたのに元のサイズになってしまったのもショックでしたが、それよりこのしこりを取るためには胸に傷をつけないと出来ないと言われたのはもっとショッックでした。
癌ではないからこのままでもいいといわれましたが、明らかに触れるしこりを一生抱えることの憂鬱に手術を後悔する毎日でした。しこりも取りたいけれどやはりバストを大きくしたいという思いも捨て切れません。
術前評価
触診で点線に囲まれていると範囲に石のように硬いしこりが触れます。
一見明らかな異常はないように見えますが、触診すると左右とも乳頭のやや上方に径約3.5~4.5cmの硬いしこりを触知します。
状態を正確に診断するため3次元CTを行いました。明らかな黒い塊が両側にあるのがわかります。
この黒い部分の周囲が一部白くなっているのは、しこりの周囲が石灰化している(石のようになっている)のを現しています。
このしこりが正常な乳腺組織を圧迫し、特に右内側(画面上左)では正常乳腺がほぼ欠損しています。
CT画像では空気と脂肪が黒く、筋肉や乳腺組織はグレー、骨や石灰化した組織は白く描写されます。右上の画像で白い線に囲まれた黒い楕円形の画像が確認できます。
これは触診で触れる乳房内のしこりの位置と大きさに一致しています。
3次元画像で右乳房を側方から観察しますと、しこりとなっている変性脂肪(黄色)が乳腺内に確認されます。
3次元画像で両側の乳房を正面から観察すると、しこりとなった変性脂肪(黄色)が確認されます。
手術方針
乳房内にできたしこりを摘出手術は乳腺外科では珍しいことではありませんが、通常は乳房の皮膚に傷跡を残します。
傷痕が目立ちにくい切開線としては、乳房の下縁に沿った皮膚切開、乳輪周囲の皮膚切開、腋(わき)のシワに沿った皮膚切開の3者があります。
この患者様では、たとえ豊胸術の術後でも乳房が乳房下線に覆い被さることはありませんので、乳房下線の傷痕が正面から見えてしまいます。
乳輪切開の傷痕はヴェリテで採用しているジグザグ切開法を用いることによってほとんど目立たなくなります。しかし、患者様から出来るだけ乳房に傷をつけたくないという希望がありましたので、腋のシワに沿った皮膚切開を用いることにいたしました。
豊胸術でC から D カップへ
乳房内のしこりの摘出と同時に、もともと希望されていた豊胸術を行うことにしました。
人工乳腺による豊胸術に不安を感じていらっしゃったので、ヴェリテクリニックで実際に豊胸術を受けたバストカウンセラーのバストを実際に触ってみて、仕上がりの柔らかさを確認していただきましたところ、人工乳腺を用いて是非豊胸を受けたいと希望されました。
希望するバストの大きさは C から D カップということでしたので、今の乳房の大きさを考慮すると200ccから250ccの人工乳腺が適切と判断しました。
乳房もその周囲の皮膚もやせているため、以前であれば大胸筋下に人工乳腺を入れるタイプです。大胸筋下法では人工乳腺が上方にずれやすい、乳房と人工乳腺の動きが一致しない、又、術後の疼痛が強いという問題があります。
ヴェリテクリニックが始めた筋膜下法(乳腺と筋肉の間の薄い膜の下にアナトミカル型の人工乳腺を挿入)は、この大胸筋下法の欠点を補うことができます。
さらに、筋膜下法では乳房上方で人工乳腺の輪郭が目立ちやすいという乳腺下法の欠点を克服することが可能です。
手術 術式
腋の中で隠れやすいシワに合わせて皮膚切開を加えて乳腺に向かって慎重に剥離を進め、正常組織を傷つけずにしこりの原因となっている変性脂肪を摘出することが出来ました。
大胸筋の筋膜(乳腺と筋肉の間の薄い膜)の下面にポケットを作成し、サイザー(仮のバッグ)を挿入して大きさを確認したところ、患者様が225ccを希望されました。
しこりの摘出後に出来た乳腺の欠損が目立たないよう225ccのアナトミカル型の人工乳腺の配置を調整しました。
手術 術式
【修正手術 前】
【修正手術 後】
豊胸術(シリコンバッグ挿入)のトラブル一覧
A) バストの位置が高すぎる(外側や内側の広がりが足りない)
バッグを挿入するためのスペースの剥離が不十分であったり、バッグがスペース内の高い位置に固定されたりすると、バストの位置が高くなってしまいます。
対応
バストの位置が高すぎる場合は、バスト位置を下げる為に、バッグの入っているスペースを下方に広げる処置を行わせて頂きます。術後1 週間後に明らかに位置が高すぎると判断した際は、すぐに処置を行わせて頂きます。
術後1 週間以降に高すぎたと判断した際は、4 ヶ月以上経過を待ってから処置を行います。
B) バストの位置が低すぎる(外側すぎる・内側すぎる)
バッグを挿入するためのスペースが下方に広がり過ぎると、バストの位置が低くなってしまいます。
対応
バストの位置が低すぎる場合、バッグの入っているスペースの下側を狭くする必要があります。そのため下記のような方法で対応します。
◆糸で固定
好ましいアンダーバストのラインに合わせて、狭くする範囲を糸で固定し、剥離され広く開いたスペースを癒着させ、小さくします。
術後1 週間後に明らかに位置が低すぎると判断した際は、皮膚の表から大きな針で糸を通して皮膚を胸壁の筋肉に固定します。そうすることで、広く剥離されたスペースを癒着させて小さくします。
※ この処置により、アンダーバストの糸で固定している場所に、エクボの様な凹みが出来ます。時間と共に徐々に馴染んでいきますが、6 ヶ月程続くこともあります。
◆ バッグの抜去・再挿入
一旦バッグを抜去し、4 ヶ月程待って頂くと、バッグを入れていたスペースが癒着し、元の状態に戻ります。その後に、再度バッグを挿入します。
C) 希望のサイズでない
手術後3 ヶ月程はむくみのため、バストが大きく見えます。手術前に豊胸後のバストの大きさや形を正確に予測することは出来ません。そのため手術後、希望のサイズではないと感じることはあります。
対応
希望のサイズでないと感じた場合、バッグの入替を行い調整いたします。
※ただし、サイズアップの場合、バッグの輪郭が浮き出る・被膜拘縮・感染の可能性が高くなるなどのリスクも伴います。また、体型・手術時の状態によっては、それ以上大きなサイズのバッグへの入れ替えが、難しい場合もあることをご了承ください。
D) バストの左右差(位置のずれ・大きさの違い)
バストの位置や大きさの左右差は、元々のバストの大きさや形・位置の違いによることもありますが、バッグを入れた際の位置のズレによることもあります。
対応
バストの左右差が気になる場合は、状態により上記A)、B)、C)に準じて行わせて頂きます。
E) バッグの輪郭が浮き出る
元々、バストが小さい方や、皮下脂肪が少ない方は、シリコンバッグの輪郭が浮き出て見えてしまうことがあります。
また、姿勢によってはバッグが折れてバッグにシワが入り、そのシワのラインが浮き出ることがあります。
対応
バッグの輪郭が浮き出た場合、バッグの周りに、ご自身の脂肪やヒアルロン酸などで膨らみをつけるか、小さなサイズのバッグに入れ替えるなどの対応をさせていただきます。
F) 被膜拘縮(カプセル拘縮)
異物であるバックを入れることにより、免疫反応によってバッグ全体に膜が出来ます。その膜が縮むと、硬くなり、不自然な形になることがあります。
対応
被膜拘縮が起こるのは稀ですが、被膜拘縮を起こした場合、バッグを抜去するか、被膜を切除してバッグを入れ替える手術をご提案させて頂きます。
バッグを入れ替える場合、被膜の切除を行うため、乳房下縁(アンダーバスト)に切開を加える必要がありますことをご了承ください。
※ 被膜拘縮が起こる原因はいろいろありますが、体質も原因の一つですので、入れ替えを行っても、再度、被膜拘縮を起こす可能性がありますことをご理解ください。
G) 胸の中でバッグが動く
バッグを入れるために作ったスペースの中でバッグが回転したり、ひっくり返ることがあります。
対応
胸の中でバッグが動いた場合、マッサージを行ってバッグを正しい位置に戻す処置を行わせて頂きます。上記の方法で改善されなかった場合は、再度切開を行い、修正させて頂きます。
H) 傷跡が気になる
傷跡が赤く盛り上がる、幅が広くなる、色素沈着、凹むなど、傷跡が目立つ場合があります。
対応
傷跡が気になる場合、状態に合わせて下記の方法を用います。
◆ ステロイド(ケナコルト)注射
※ケロイドのように赤く盛り上がったキズを平らにする処置を行います。
十分な効果が得られるまで、1 ヶ月に1 回の治療を繰り返す可能性があります。
ステロイドの副作用としては、傷が凹む、毛細血管が浮きでるといった事があります。
◆ クリーム治療 ※色素沈着によって傷跡が目立つ場合
● ハイドロキノンクリーム ※色素を薄くします。
● トレチノイン+ハイドロキノンクリーム ※肌のターンオーバーを早め、新たな皮膚を再生させます。
◆ 切開法
① キズアトの凹みは、ワキの傷とバストの傷が繋がり、引っ張られている事が原因です。
その際は、再度傷を切開し、癒着をはがす処置を行わせて頂きます。
② キズアトの幅が広がってしまった場合は、術後4 ヶ月以降、傷の赤みが消えたうえで、再度切開し、キズアトを切り取り、丁寧に縫い直します。
I) インプラントの破損
通常、バッグが破損することは考えにくいですが、非日常的な力が加わることによって破損する可能性もあります。
対応
バッグが胸の中で破損した場合、バッグを抜去、又は入替を行います。
また、出来る限り、バッグの破片と中身のシリコンジェルをかき出しますが、多少体内に残ってしまう可能性がありますことをご理解ください。
また、もともと、胸の組織とバッグの癒着が強い場合、ワキからの手術ではバッグの破片をきれいに取りきれない可能性もあります。残ったバッグの破片をしっかり取り除く事を希望される場合、アンダーバストに沿って切開し、バッグの破片を除去します。
J) 胸部の感覚麻痺
手術中にバストの知覚神経が引き伸ばされるので、バストの皮膚や乳輪・乳頭の知覚が鈍くなることがあります。
対応
基本的には、時間とともに徐々に感覚が戻ってきます。ただし、日常生活には問題ない程度ですが、完全には回復しない場合もあります。
K) 感染(化膿する)
赤み・痛み・腫れ・熱感が増したり、長く続いたりする場合は、感染が疑われます。
対応
感染が起こりそのまま放置すると、菌が全身に広がり、高熱が出たり、胸の皮膚が破れて膿が外に出てくることもあります。
そして、皮膚が破れた後にはキズアトが残ってしまうため、感染が起きた時には皮膚が破れる前に早急な処置が必要となります。
基本的に、内服薬の服用や抗生剤の投与2 週間続けて経過を見ます。それでも改善しない場合、バッグの抜去が必要となります。
ただし、状態によっては、早急にバッグを抜去しなければならない場合もあります。
抜去後の再挿入の時期は、少なくとも抜去手術から4 ヶ月経過した後(感染の原因となる細菌が完全に消えてから)となります。
L) 血が溜まる
術後に傷の中で出血しますと、血が溜まって胸部が紫色に腫れ上がります。血が溜まったままにしておきますと、感染やしこりを作る恐れがあります。
対応
血が溜まった場合、出来るだけ早く処置をする必要があります。その際は再度傷を開け、溜まった血液を排出します。
M) 傷が開く
稀に糸が外れて、傷が開いてしまうことがあります。
対応
傷が開いた場合は、再度縫合いたします。
N) 中縫いの糸が出てくる
皮膚の下の組織を縫い合わせている糸(中縫いの糸)が出てくることがあります。
対応
皮膚の下の組織を縫い合わせている糸(中縫いの糸)が出てくることがあります。
そのままにしておくと化膿する恐れがありますので、早めに来院して頂き、抜糸を行なわせて頂きます。
O) 術中の出血
手術中、スペースを作る操作によって太い血管が傷ついて、大量に出血する可能性があります。
対応
ワキからの切開の場合、出血を止める事が出来ないことがあります。その場合、乳房下縁を切開し止血させて頂きます。
P) テープかぶれ
キズ口を保護するために、キズの上にガーゼをあててテープで止めさせて頂きます。肌の弱い方は、テープかぶれが起こって水疱ができることがあります。
対応
通常、1 週間程で水ぶくれは破れて治ります。その後、色素沈着になることがありますが、その場合は、シミ取りのクリームを処方させて頂きます。
脂肪注入のトラブル一覧
感染(化膿する)
脂肪注入の手術後、熱感・痛み・腫れが増す、あるいは長引く場合は、感染が疑われます。
対応
感染が起きた場合は、内服薬服用や抗生剤の投与を1 週間続けて経過をみます。
膿がたまった時には、皮膚を切開して膿を出す処置をさせて頂きます。
血が溜まる
術後皮膚の中で出血が起こると、傷の中に血が溜まってしまい、腫れ上がります。
対応
再度、傷を開け溜まった血を排出する処置をします。
物足りないと感じる
脂肪の生着率には個人差があり、予想外に吸収されて膨らみが足りなくなることがあります。
対応
手術後の経過が物足りないと感じる場合、足りない部分に再度脂肪注入をするか、ヒアルロン酸を注入して膨らみを補うことができます。
膨らみすぎたと感じる
脂肪の生着率には個人差があり、予想以上に生着がよく、膨らみすぎてしまうことがあります。
対応
膨らみすぎたと感じる場合、膨らみすぎた部分の脂肪を吸引する、ステロイド(ケナコルト)注射を打つ、あるいは脂肪溶解注射を打つといった方法があります。
※ステロイドには脂肪を萎縮させる作用がありますが、副作用としては、凹みすぎる、皮膚が薄くなる、毛細血管が浮きでるといった事があります。
左右差
脂肪の注入量や注入部位はできるだけ左右でそろえるように行いますが、生着率が左右で異なり、膨らみに左右差を生じることがあります。
対応
左右差の修正をご希望の場合、ボリュームの足りない側に脂肪の追加注入をする、あるいはボリュームが大きい側に脂肪吸引を行うといった処理をさせて頂きます。
皮膚の色素沈着
内出血ができることは珍しいことではありません。
稀に、内出血の血液の分解産物の色素が皮膚の中に残って、茶色の色素沈着が続くことがあります。
対応
内出血が起きた場合、通常約3週間で消失します。
茶色の色素沈着が続くことがありますが、6~12ヶ月で色は薄くなっていきます。
傷跡の盛り上がり・凹み・色素沈着
脂肪を吸引した所に、数ミリの傷跡が何ヶ所かできます。体質によって傷跡がケロイドのように赤く盛り上がったり、色素沈着を起こしたり、凹んだりして目立つ場合があります。
対応
気になる場合、下記の方法を用います。
・ステロイド(ケナコルト)注射
赤く盛り上がった傷を平らにする処置を行います。
効果が出るまで、1ヶ月に1回の治療を繰り返す可能性があります。
またステロイドの副作用として、皮膚や傷が凹む、細かい血管が浮き出るといったことがあります。
・ハイドロキノンクリーム
色素を薄くします。
・トレチノイン+ハイドロキノンクリーム
肌のターンオーバーを早め、新たな皮膚を再生させます。
・切開法
凹んで目立つ傷は、切開して再縫合を行います。
テープかぶれ
手術後、傷口を保護するためにテープを貼らせて頂きます。皮膚の弱い方ですとテープかぶれを起こす場合があります。
対応
なるべくテープかぶれにならないように、テープを貼るのは短期間にさせて頂きます。
テープかぶれで出来た水ぶくれや皮膚のむけた所は、1~2週間で治りますが、その後3~6ケ月程色素沈着になることがあります。
その場合は、ハイドロキノンクリーム、トレチノイン+ハイドロキノンクリームでの治療をおすすめします。