
この記事の監修
三苫 医師
ヴェリテクリニック 医師
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たるみ治療として人気の「糸リフト」。
メスを使わず切開もしないためダウンタイムも短く、多くの方に人気がある施術の1つです。
糸リフトを検討している方の中には「どんなやり方なの?」「仕組みを知りたい」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、糸リフトの仕組みや効果、施術方法について紹介します。
事前に理解してからカウンセリングを受ければ、よりスムーズな検討につながり理想の状態へ近づきやすくなるため、ぜひ参考にしてください。
目次
糸リフトのやり方は?施術方法を解説

糸リフトとは、「コグ(棘)」と呼ばれる突起がついた医療用の糸を皮下組織に挿入し、物理的にたるみを引き上げる施術方法です。
クリニックによって使用する糸や施術方法が異なるケースはありますが、この記事では一般的に行われている糸リフトのやり方を紹介します。
糸の挿入位置を決める
一般的に、糸リフトはこめかみから挿入しますが、「どのくらいの深さで」「どの方向に」するかは人によって違います。
- 骨格
- 顔の筋肉状態
- 左右対称性
- 肌の状態
- 入念なカウンセリング
骨格は、糸リフトの結果を大きく左右する重要なポイントです。
例えば頬骨や顎の形状が目立つ場合、糸リフトによってその部分が強調されてしまい逆効果になることがあります。
骨格の次に重要なのが、顔の筋肉状態(発達具合)です。
特にエラの筋肉が発達している場合は咬筋(こうきん)が発達しているため、糸が筋肉の重量に負けてリフトアップ効果が得られにくくなります。
他にも、自然な仕上がりにするために左右の対称性は重要です。
施術前に医師が左右の筋肉の違いをしっかり把握し、バランスよく引き上げなければ左右非対称になる可能性があります。
骨格・筋肉・バランス以外に、肌の状態も重要です。
皮膚の薄さや弾力性、肌にダメージがないかなどのポイントは、挿入深度や適切な糸を選ぶために欠かせません。
これらのポイントを踏まえ適切な糸の挿入位置を決めるためにも、事前のカウンセリングは重要です。
担当医に状態をチェックしてもらうと同時に理想のイメージを伝え、担当医と仕上がりイメージをしっかり共有しましょう。
位置が決まったら、リフトアップしたい部分に合わせて皮膚の上からガイドライン(線)を引き、デザインします。
麻酔をする
糸の挿入位置が決まったら、麻酔をします。
「麻酔はどこにするの?」「どんな麻酔をするの?」と不安な方も多いのではないでしょうか。
糸リフトの麻酔には、一般的に挿入箇所だけ麻酔をする「局所麻酔」と体全体をリラックスさせる「笑気麻酔」があります。
局所麻酔と笑気麻酔の特徴
麻酔の種類 | 特徴 | 痛み |
---|---|---|
局所麻酔 | ・特定の部位に麻酔薬を注射 ・部分的に感覚を麻痺させる ・施術中は意識があり、会話も可能 | ・麻酔注射時にわずかな痛みを感じる ・施術中の痛みはほとんどない |
笑気麻酔 | ・マスクを通じて笑気(亜酸化窒素)を吸入 ・全身をリラックスさせ痛みの感覚を和らげる ・施術中は意識があり、会話も可能 | ・麻酔吸入の痛みはない ・施術中の痛みや不安を感じにくくする |
糸リフトでは、局部麻酔を使用する場合が多く施術中は会話ができる程度の意識がありますが、糸の挿入や皮下組織を通る時の痛みはほとんどありません。
クリニックによって採用している麻酔が異なる場合もありますので、痛みに不安な場合は、事前に確認しておくといいでしょう。
糸を挿入する
麻酔が効いたら、こめかみ付近から糸を挿入します。
使用する糸には種類があり、持続期間や特徴が異なります。
代表的なものを紹介しますので、参考にしてみてください。
糸リフトで使われる代表的な糸の種類
糸の素材 | 吸収 | 特徴 | 効果 |
---|---|---|---|
PDO (ポリジオキサノン) | 吸収性糸 (溶ける) | ・6ヶ月から1年ほどで吸収 ・短期間で効果が現れやすい ・持続期間は比較的短い | ・軽度のリフトアップ向き ・細かいシワの改善 ・美肌効果 ・コラーゲン生成を促進 ・肌の引き締め効果 |
PCL (ポリカプロラクトン) | 吸収性糸 (溶ける) | ・1年ほどかけて徐々に吸収 ・持続期間はPDOより長い | ・高いリフトアップ効果 ・柔軟性に優れている ・自然な仕上がりが期待できる ・コラーゲン生成を促進 ・肌の質感を改善 |
どの糸を挿入するかは、カウンセリングでたるみの度合いや皮膚の状態を見て医師が判断します。
カウンセリングで決めた糸をガイドラインに沿って挿入し、コグ(棘)が皮下組織に引っかかるよう慎重に施術を進めます。
糸を挿入すると皮膚が引っ張られているような感覚がありますが、コグ(棘)が皮下組織に引き上げられるためです。
引っ張り上げた後、糸を固定する
挿入したら、最後に引っ張り上げて糸を固定します。
ここが最も重要で、仕上がりだけでなく持続期間にも大きく影響を与えるといっても過言ではありません。
引き上げが強すぎると、「ひきつれ」「肌表面の凹凸」などが出てしまい、弱すぎると、「糸のゆるみ」「持続期間が短くなる」などが起こります。
引き上げの度合いは、医師による事前の診断や技術力、イメージの共有が鍵になるためしっかりと伝えることが重要なポイントです。
適切に糸を引き上げたら、皮膚から出ている余分な糸をカットして施術が完了です。
糸リフトの効果

「糸リフト=リフトアップ」を連想する方も多いですが、他にも多くの効果に期待できる魅力的な治療です。
主な効果を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
リフトアップ効果
「糸リフトのやり方は?施術方法を解説」で紹介した通り、糸リフトの代表的な効果はリフトアップです。
糸リフトは、皮下脂肪が多く顔の筋力が低下して起こる「たるみ」部分を、医療用の糸で物理的に引き上げる治療です。
頬やあご、フェイスラインのたるみなどにおすすめな治療ですが、強いたるみや脂肪の量が多い場合は効果がうまく発揮できないこともあります。
その場合は切開リフトによる治療や脂肪吸引との組み合わせなどがありますので、カウンセリングで相談しましょう。
将来的なたるみ予防
糸リフトは、たるみを改善するだけでなく将来的なたるみ予防に効果的です。
挿入された糸によって皮下組織内に傷がつき、この傷を修復するために「瘢痕(はんこん)組織」と呼ばれるものができます。
この組織はコラーゲン繊維の塊で形成されていて、糸が体内に吸収された後も一定期間体内に残るため長期的に肌を支えることが可能です。
1回の糸リフトでもある程度効果はありますが、定期的に施術を受けることで強固になり、将来的なたるみ予防につながります。
たるみの程度や理想の状態、予算などによって施術を受ける間隔は異なりますので担当医に相談して自分に合った計画を立てましょう。
小顔効果
糸リフトは「小顔効果」にも期待ができる治療です。
顔が大きく見える原因の1つに、加齢による筋力低下で下顔面(鼻の下から顎の先端までの顔の下部)が重たくなるフェイスラインの崩れがあります。
いわゆる「下膨れ」です。
私たちの肌は、年齢を重ねるにつれて肌のコラーゲンやエラスチンの生成が減少し、皮膚の弾力性が徐々に失われていきます。
すると、肌や脂肪は重力に負けて下降していきますが、若い頃は顔の筋肉がしっかりしているためたるみを感じることは少ないでしょう。
しかし、年齢とともに筋肉が減ると脂肪が持ち上げられず、本格的なたるみが始まります。
その結果、頬から口元にかけて膨らみが出てしまい、フェイスラインのもたついた印象や輪顔の変化、顔が大きく見えるなどの変化が出てきます。
糸リフトは糸を使って物理的に皮膚を持ち上げる治療です。
下がった脂肪を上方に移動すればフェイスラインや頬のたるみがスッキリするため、小顔効果が得られるというわけです。
即効性を感じやすい
糸リフトは術後一時的にむくみなどは出るものの、物理的に皮膚を持ち上げるため施術直後からリフトアップ効果を感じやすい治療です。
また、糸リフトは切開を伴わないためダウンタイムが短く、傷口もほとんど目立ちません。
そのため、「すぐに顔の印象を改善したい」「長期間休みが取れない」という方に適した治療といえます。
糸リフトの施術後に気をつけること

糸リフトのダウンタイムを長引かせず効果を最大限に発揮させるために、施術後は注意しておきたいことがあります。
顔に刺激を与えない
施術後、糸がなじむまでは顔に刺激を与えないようにしましょう。
刺激を与えると、糸のコグ(棘)が外れたり切れたり、内出血などのダウンタイムが長引いたりする可能性が高まります。
- 違和感が気になり触れる
- 顔のマッサージなど
- 硬いものや咀嚼回数の多いものを食べる
挿入した部分が気になって触れたくなりますが、糸リフトでは糸を挿入する際に皮下組織に傷がつき修復作業をしています。
そのため、必要以上に触れたりマッサージなどでさらに刺激を与えたりすると、傷の修復を遅らせダウンタイムが長引きます。
また硬いものを噛んだり、咀嚼回数の多いものには注意が必要です。
硬いものを噛むときは顔周りの筋肉に力が入り、咀嚼回数の多いものは顎の運動回数が増えるため刺激になります。
少なくとも施術後1週間ほどは、お粥やうどんなどの柔らかい食べ物を少量ずつ口にするようにしましょう。
口を大きく開けない
糸がしっかり定着するまでは、口を大きく開けないよう注意が必要です。
- 食事
- 歯科治療
- 筋肉を動かす表情
糸リフトの施術直後は糸が皮下組織に定着していないため、大きく口を開けると糸がずれたり外れたりするリスクが高まります。
そのため、糸がしっかりなじむまでの約1ヶ月間は下記に注意してください。
- 食事の一口は小さく
- 歯科治療や定期検診は事前に済ませておく
- 表情を大きく動かさない
糸リフト後に口を大きく開けないようにするのはリスク回避だけでなく、糸の安定性を保ち、痛みや違和感を軽減するとともに術後の回復を促進します。
術後しばらくは不自由さを感じますが、とても重要な期間なので頑張って乗り越えましょう。
就寝時はうつ伏せで寝ない
ダウンタイムが落ち着くまでは、寝る時の姿勢にも注意が必要です。
- 糸のずれが起こる
- 腫れや不快感・ダウンタイムの延長
- 血行不良のリスク
うつ伏せや横向きで寝ると挿入した部位に圧力がかかるため、痛みやむくみの発生や糸がずれることがあります。
他にも、うつ伏せで寝ると顔の血流が圧迫されて血行不良が起こり、腫れや内出血が起こりやすくなります。
結果として、仕上がりへの影響やダウンタイムに影響するため、術後1〜2週間ほどは寝方には注意してできるだけ仰向けの姿勢で寝るようにしましょう。
激しい運動や飲酒は控える
施術後は、激しい運動や飲酒などの血行が良くなる行動は注意が必要です。
- 腫れや内出血の増加・回復の遅延
- 感染症のリスク
- 糸のずれ
顔の血流が良くなると、施術部位の炎症が促進されて腫れや内出血が起こるため、ダウンタイムの延長や回復の遅延につながります。
血行が良くなる代表的な行動には、下記のようなものがあります。
- 激しい運動
- 飲酒
- 長時間の入浴
- サウナや岩盤浴
日常のルーティンにこれらの行動がある方は、一時的に控えてください。
また、血流以外にも運動などによって糸の挿入口(傷口)に汗が付着すると、強い痛みや細菌感染を引き起こす可能性もあります。
他にも、体が激しく動くと顔にかかる圧力が増して糸がズレることもあります。
そのため、糸リフトの施術後1〜2週間は、血流が良くなる行為やアクティブな行動は控えるようにしましょう。
まとめ

糸リフトのやり方や仕組み、効果や施術後の注意点まで紹介しました。
- 肌状態や骨格に合わせて位置を決める
- 施術中は麻酔を使い痛みはない
- 引き上げ度合いは医師の技術と入念なカウンセリングがカギ
- 糸リフトの効果はリフトアップ以外にも多数
- 糸がなじむまでの間は刺激を避ける
糸リフトはメスを使わず切開もしないため、手軽なたるみ治療として人気のある施術です。
やり方や仕組み、効果やダウンタイムの過ごし方をしっかり把握することは、カウンセリングをスムーズにし、理想の状態へ近づきやすくなります。
また、リフトアップだけでなく多くの効果がある糸リフトはとても魅力的ですが、状態によって別の治療が効果的なケースもあります。
ヴェリテクリニックでは、それぞれの患者様に合った治療を提案していますので、お気軽にご相談ください。