肌のハリはしだいに失われていく
美容外科でできる肌のエイジングケア
美容外科でも肌のハリについてのエイジングケアを提供しています。医学的研究に基づく手術が主で、コラーゲンやエラスチンにピンポイントに働きかけていきます。
シワの対策としてメスを用いた手術を行うこともありますが、症状が軽い状態であれば切らずに対策できます。以下に、メスを使わない美容外科の肌のエイジングケアの例を挙げましょう。
・コラーゲンピール
・水光注射
・注射・点滴治療
・ベビーコラーゲン
・PRP療法(多血小板血漿)
これまで美容外科でのエイジングケアについて調べたことのない方ですと、初めて聞く名称が多いのではないでしょうか。それぞれについて、特徴とメリット・デメリットをもう少し詳しく見ていきましょう。
肌のはがれないピーリング「コラーゲンピール」
コラーゲンピールは、高濃度トリクロロ酢酸と低濃度過酸化水素水、コウジ酸5%を配合したピーリング剤である「PRX-T33」を用いたピーリングです。
トリクロロ酢酸のみでは、肌の表面の表皮がはがれ落ちてしまいますが、PRX-T33では表皮がはがれることなく真皮に働きかけることができます。つまり、ピーリングという言葉が入っていますが、肌をはがさずにターンオーバーにつなげることを目的とした治療法です。
コラーゲンピールのメリット
肌表面に塗るだけですので、注射と違い基本的に痛みはありません。施術後にお化粧をすることもできます。
コラーゲンピールのデメリット
反応が強く出てしまう場合には、やけど跡のような瘢痕が形成されることがあります。治療中に痛みが出た場合、直ちに申し出ていただければその場で対策いたします。
また、ごくまれに、色素沈着が起こる場合があります。この場合、色素沈着に対する治療としてハイドロキノン軟膏やトレチノイン軟膏で対応していきます。
美容成分をピンポイントで注入する「水光注射」
水光注射は、水光注射専用の機器を用いて、ヒアルロン酸やボトックス・PRP・ビタミンなどを混合した美容成分を肌に注入する治療法です。
水光注射のメリット
水光注射では手ではなく専用に開発された電動の注射機器を用います。この機器を使うと、注入量や速度、深さなどにムラのない、精密な注射が可能になります。手早く注入していけるので「注射の針が刺さる!」などといった緊張感を受けやすい方におすすめしたい治療法です。
注入内容を選べるのもメリットです。
ヒアルロン酸(NCTF-135HA+)とボトックスを中心に、
・プラセンタ
・ビタミンC
・PRP
なども同時に注入できます。複数の方向性でエイジングケアを考えたい方はご検討ください。
水光注射のデメリット
水光注射では、ごく稀に異常な赤みや腫れ、ひどいかゆみ、熱感などの薬剤アレルギー症状が出る場合があります。このようなアレルギー症状には、通院いただき、抗アレルギー剤の内服やステロイド剤の点滴で対応していきます。
また、注入した薬剤が均等に広がらない場合に、表皮に凹凸が出てしまうことがあります。凸凹を予防するために、注入した後に薬剤が広がっていくようにご自身でマッサージしていただくことをおすすめしています。
治りにくい場合には、通院していただき院内でマッサージを施したり、ヒアルロン酸が理由であればヒアルロン酸分解注射でヒアルロン酸を溶解させちょうどよい膨らみにしたり、といった対応をいたします。
不足しがちな栄養素などを補う「注射・点滴治療」
注射・点滴治療では、肌のターンオーバーに使われる栄養成分などを注射や点滴によって体内に投与します。
例えば、
<点滴>
・プラセンタ
・ビオチン
・アルファリポ酸
・ビタミンC
・各種ビタミンB群
<点滴>
・ラエンネック(プラセンタ:ヒト胎盤エキス)
などがあります。
注射・点滴治療のメリット
対策したい内容によって、成分を組み合わせることができます。例えば、日頃足りないと思っているビタミンCやその他のビタミン群などを点滴する方もいらっしゃいます。
食の細い方や「どうしても苦手で食べられない」という食品の多い方などにメリットがあります。
注射・点滴治療のデメリット
点滴の場合、30分程度時間がかかります(プラセンタ注射は5分程度)。
症状や個人によって必要と感じる頻度が異なるため、わかりやすい変化をお求めの方にはおすすめしにくいです。
ヒト由来コラーゲンを注入する「ベビーコラーゲン」
コラーゲンには19種類の型があることがわかっていますが、このうち、I型コラーゲンとIII型コラーゲンを同じ割合で配合した注入用のコラーゲンが、ヒューマラジェンです。
このうち、III型コラーゲンは、細胞のターンオーバーを助けるもので、乳児の肌に多く含まれることから「ベビーコラーゲン」とも呼ばれています。III型コラーゲンは加齢とともに失われますが、その切り替わりの年齢は25歳頃といわれています。
ベビーコラーゲンのメリット
ベビーコラーゲン注射では、自分では生成しにくいIII型コラーゲンを直接気になる箇所に注入できます。漠然と待つのではなく直接働きかける治療法である点が特長です。
注射なので施術箇所の数にも拠りますが基本的には短時間で終了します。施術後、すぐに帰宅でき、また化粧も可能です。
ベビーコラーゲンのデメリット
ごくまれに異常な赤みや腫れ、熱感等のアレルギー症状が起こる場合があります。アレルギー症状の出る期間として注入後の場合もあれば、数日、長くて約2週間後の場合もあるので、注意が必要です。アレルギー症状が出た場合には、通院していただき、抗アレルギー剤の内服やステロイド剤の点滴で対応していきます。
血管内にベビーコラーゲンが注入されたり、注入によって皮膚が膨れ上がったりすることで、皮膚に血行障害が起こる場合があります。血行障害が起こって数時間でその部位は変色し、痛みが出てきます。もしそのままにしてしまうと、皮膚が萎縮し、その部分がへこんだり赤みが残ったりし、さらに重い状態では皮膚が壊死して黒いカサブタになってしまったりします。
いずれの場合も症状に気づかれましたら、なるたけ早く来院していただく必要があります。
自己血の血小板を用いる「PRP療法(多血小板血漿)」
PRP療法は、ご自身の血液から採取した血小板を用いる治療法です。PRP療法は美容だけでなく、ケガなどの治療にも用いられます。
血小板はケガや傷を負った際に創傷部に集まり傷を治す役割を持ちます。PRP療法ではこの仕組みに基づき、ダメージを負った部分に働きかける機能を持った血小板を、必要な部位に注入するのです。
約10~20mLの血液を採取しPRP(多血小板血漿)を分離・濃縮します。これを適切な箇所に注射していきます。
PRP療法(多血小板血漿)のメリット
コラーゲンやヒアルロン酸を注入する治療法は、老化した細胞のこなせない役割を補うためのものです。他方、PRP療法は細胞自体に働きかけることを目的としています。
注射の際には、ご希望があれば痛みの敏感な方は麻酔テープや麻酔クリームが利用できます。注射ですので、当日に帰宅できます。お化粧も施術後に行ってかまいません。
なお、PRPが吸収されるまでの期間は1~3年あり、次回の施術までの期間を長くとれるのも特長です。
PRP療法(多血小板血漿)のデメリット
注入した箇所に赤みや熱感、痛み、腫れなどの症状が出て、その後収まらないなど、感染が起こる場合があります。この場合、通院していただき、内服薬の処方や抗生剤の投与で対応していきます。
なお、まれですが、症状がひどい場合には、切開して膿を出します。
肌のエイジングケアのために日々できること
エイジングケア以前の基礎として、睡眠時間を十分にとったり新鮮な野菜などからビタミン等を摂取するなど食事に気を遣ったりすることも忘れてはいけません。
習慣化アプリを活用する
とはいえ、現代のせわしない生活のなかで続けていくのに難しさを感じる方も多いでしょう。そのような習慣作りのためにスマートフォンなどのアプリを利用するのもいいですよ。
習慣としたい事柄をリストアップし、それぞれについて「1日につき3回」「x月x日までに4回」などのように設定をします。実際に行う度にボタンをタップして記録していくと、実施できた回数を視覚的に確認できるので達成感が得やすいです。
ゲーミフィケーションを活かしたアプリで、モチベーションを保ちながらエイジングケアに取り組みやすくなりますよ。
以上、肌のエイジングケアのために美容外科でできる切らない手術を、また、ご自身で日々できることをご紹介してきました。
自分一人で頑張ろうと思っても、試していることの確かさがわからないと迷いが生じてしまうもの。受診されましたら、医学的にはどのような対策ができるかについて、より詳しくお伝えすることが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
美容に関心のある女性の気になるポイントといえば「肌のエイジングケア」。残念ながらどんなに努力しても「老化を止める」ことはできません。それだけに、老化につながるような要因について対策しエイジングケアをしていくことは大切です。
肌のハリが失われる理由とは
そもそも肌のハリはなぜ失われるのでしょうか。肌のハリには肌の構造が大きく関係しています。
肌は角質層(角層とも)などからなる表皮と、その下にある真皮で構成されています。真皮には肌の構造を支えるコラーゲンやエラスチンといった繊維が広がり、その内側を肌の弾力の鍵となるヒアルロン酸などが満たしています。
エイジングが進んだ肌では、真皮のコラーゲンやエラスチンの量が減ったり変性したりしています。若い頃なら均等に広がっていた真皮の枠組みが一部で凹んだままになったり途切れたりするのです。このような状態になると、表皮にも影響が現れます。具体的な例としては、小ジワやシワです。
コラーゲンやエラスチンの減少の対策は保湿で十分?
市販の化粧品には「コラーゲン入り」などとうたった商品が多くあふれています。このような保湿対策の化粧品を使えば、コラーゲンやエラスチンの減少は食い止められるのかというと、実は不十分です。コラーゲンやエラスチンは分子が大きく、真皮まで浸透しません。このため、減ってしまっているところに届かせたいと思っても、届くことがないのです。
もちろん、このような化粧品に全く意味がないわけではありません。例えば、エイジングとともに表皮の細胞間を満たしているはずの「細胞間脂質」が減っていくと、肌のバリア機能がダウンしますね。この肌の保湿機能の減少による肌トラブルの増加を、保湿化粧品による保湿で予防していくことはできます。ごく小さな小ジワの段階であれば、真皮レベルでは異常がないため、保湿で対策できます。
しかし、より進んだ真皮部分での小ジワやシワについては、ピンポイントでの対策が必要になります。